利尿薬
■利尿薬の作用・効果
日本で処方される頻度は低いですが、海外では多く使用されている薬。値段も安く効果もあるため、今後は処方される機会が増えることが予想されます。以下の2種類がよく使用されます。
(a) サイアザイド系
腎臓でのナトリウムの再吸収を抑制し、体内のナトリウムを少なくすることで短期的には循環血液量が減少、長期的には末梢血管抵抗を低下させて血圧を下げます。しかし、腎臓の機能がある程度以上悪くなると効きません。
(b) ループ利尿薬
腎臓でのNaCl再吸収を抑制して利尿効果を発揮します。サイアザイド系と比べると、利尿作用は強いのですが、血圧を下げる効果は弱いので、圧倒的にサイアザイドのほうが使用されます。しかし、腎機能が低下している例でも有効であるという利点があります。
(c) アルドステロン拮抗薬(カリウム保持性利尿薬)
アルドステロンは副腎で作られるホルモンの1つで、体内のナトリウムとカリウムのバランスを調節していますが、このホルモンの作用をブロックすることで腎臓からのナトリウム排泄を促し、血圧を下げる薬です。いくつかの降圧剤を併用してもなかなか血圧がじゅうぶんに下がらない治療抵抗性高血圧の方によく投与されます。また、心不全の予後を改善することも報告されています。
■ 利尿薬の副作用・注意点
(a)サイアザイド系、(b)ループ利尿薬には、以下のような代謝への影響があります。
○ 低カリウム血症
血液中のカリウムが少ない状態。大きく減ると筋力低下やけいれん、麻痺、嘔吐、便秘などの症状が現 れます。
耐糖能低下……血糖値が下がりにくくなります
高尿酸血症……尿酸値が高くなります
しかし、1/4錠〜1/2錠程度の少量であれば、これらのリスクを抑えることができますので、高齢者、腎疾患、糖尿病などの方に少量処方されます。ですが、β遮断薬と併用すると、血糖や脂質の代謝に悪影響を与えるため、勧められません。
低カリウム血症の予防にはカリウム保持性利尿薬を併用したり、カリウムを多く含むかんきつ類の摂取などを勧めたりします。
これらに対して、(c)アルドステロン拮抗薬には以下のような副作用があります。アルドステロン拮抗薬は利尿剤とは逆に、腎臓からのカリウムの排泄を抑制するため、内服中は高カリウム血症に注意が必要です。ほかの利尿剤との併用では副作用が相殺されてよいのですが、ARBやACE阻害薬との併用ではさらにカリウムが上がりやすくなり、より注意しなくてはなりません。また、中等度以上の腎機能障害の方には使えません。古くから使われているものは性ホルモン作用の抑制に伴う女性化乳房などの副作用がありましたが、新しいものでは頻度が非常に少なくなっています。
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